中小企業診断士として登録するには15日間の実務補修又は実務従事が必要になります。
普通の人は中小企業診断協会が主催している実務補修(5日間)を3回受けることになります。
ここでは実務補修の概要と乗り切るコツを紹介したいと思います。
実務従事について知りたい方は以下の記事をご参考ください。
中小企業診断士 実務従事について|知り合いはOK? 実際にやってみた
実務補修とは
何をやるの?
実際に中小企業を訪問し、問題や課題のヒアリングを行い、分析、レポート作成、改善提言を行い、最終日は社長に報告、プレゼンテーションを行います。
二次試験の事例を実際にやるイメージですが、二次試験のようにあちこちにヒントがあるわけではないので、現状や課題をヒアリングする能力が必要になります。
またチームで実施するため、チーム内で方向性や意見を調整する能力も必要になります。
試験合格後、いきなり経営診断をやれと言われても何をやれば良いかわかりません。
実務補修を通じて、必要なスキルを学んだり、診断士としての気づきを得る事ができます。
費用は?
1回で55,000円です。
これを3回受けるのか・・・合計165,000円?
決して安くはない金額です。
これに交通費、コピー代、住んでいる地域によっては宿泊費がかかってきます。
無駄にしないように多くのスキルや人脈を獲得しようと思いました。
開催される場所・時期は?
場所は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡で開催されます。
時期は2月、7月、8月、9月(札幌、仙台、広島、福岡は8月は無し)に開催されます。
5日間コースか15日間コースか
筆者は5日間コースを選択しました。
5日間コースのメリットは多いので、もう一度やるとしても5日間コースを選択すると思います。
5日間コースのメリット
1つ目は仕事との調整がしやすいことです。
1日目(金曜日)、2日目(土曜日)、3日目(土曜日)、4日目(日曜日)、5日目(月曜日)という日程になっており、1日目、5日目は有休を取得する必要があります。
15日間コースを選択すると1か月半で6日間の有休を取得する必要がありますが、仕事の忙しい方には厳しいと思います。
2つ目はメンバーが入れ替わるため、知り合いが多くできることです。
多ければ良いというわけでもありませんが、色んな業界や職種の方、価値観、ものの見方に触れることができるのは大きなメリットと思います。
中小企業診断士になる人の平均的なレベル感や自分がどのくらいのレベルなのかを把握する事ができます。
3つ目はメンバーと相性が悪い場合でも5日間で別れられることです。
メンバー内に自己中心的な方がいたり、指導教官が放置主義だったり、やたら細かかったりすると苦労するとよく聞きます。
仕事でもそうですが誰とやるかで楽しさが変わるので、これは結構重要なメリットではないかと思います。
4つ目は実務従事との組み合わせが可能であることです。
筆者は実務補修を2回受けた時点で流れがわかってきたので、費用対効果という面で3回目を受けるかどうか悩み、結局3回目は「実務従事」を選択しました。
知り合いの飲食店で経営診断をやらせてもらったので、費用はタダになりました。
15日間コースのメリット
気が合うメンバーであれば、楽しいと思いますし、かなり仲良くなれると思います。
また3月には実務補修を終えることができるので早ければ5月には登録が可能です。
申し込み方法は?
ネットと郵送と2種類の方法があります。
東京、大阪は激戦なのですぐに予約が埋まってしまいます。
申し込み開始日の午前10時から申し込みが可能なのですが、11時に申し込もうとしたらいっぱいで申し込むことができませんでした。
そのため次からは10時前にスタンバイしておき、10時になった瞬間にスマホで予約しました。
郵送での方法はやっていないのでわかりませんが、このような激戦の中、郵送で申し込む勇気はありませんでした。
実務補修の流れについて
事前準備
1週間前くらいになると指導教官の方からメールがあります。
ここで初めて指導教官の方やメンバーの方の名前、診断先の会社名がわかります。
ノートPCが必須ですので、持っていない場合は準備する必要があります。
担当決め
経営(リーダー)、財務、営業、人事、生産、ITなどの担当をメールで話し合いながら決めます。
一回目は何もかも初めてで相当ストレスがかかりますので自分の得意分野をやると良いと思います。
二回目以降は経営(リーダー)又は財務がおすすめです。
筆者は二回目は財務の担当でしたが、非常に良い経験となりました。
現状の経営状態を可視化するツールであるという事を体感する事ができました。
また各担当の改善提言を実現するためには、これだけ投資が必要、でも数年で回収可能、というような絵姿を描き、診断報告書に説得力や一貫性を持たせるのも財務の重要な役割であると感じました。
経営診断概要把握、業界調査
実務補修用テキストが郵送されてきますので、読んでおきましょう。
「コンサルタントのフレームワーク」もおすすめです。
経営診断の流れがわかります。特に報告書作成、図表作成の部分が参考になります。
「業種別審査辞典」は大きめの図書館にしかありませんが、診断先の業界の概要や慣習を把握するのに非常に便利です。
社長へのヒアリングの時間は限られています。
その業界で当たり前の事を質問するのは時間がもったいないので、調べれることはできるだけ調べておいた方がヒアリング内容の質も向上します。
図書館で関連する部分だけコピーして、事前に読んでおきました。
ヒアリング、質問事項のリストアップ
1日目にヒアリングを行いますが、ほとんど時間がありません。
指導教官の方からも資料を頂けるので、特に自分の担当の質問事項は考えておきましょう。
1日目(オリエンテーション、自己紹介、企業訪問、ヒアリング)
同じ班のメンバー同士の自己紹介、昼食を終えると実際に企業を訪問します。
個人的には実務補修の最大の山場は1日目のヒアリングだと思います。
ヒアリングの質が診断報告書の質を決めるといっても過言ではありません。
二次試験ではあちこちにヒントがちりばめられた与件文がありますが、実務補修では与件文当然ありませんので、ヒアリング内容がそのまま与件文になるイメージです。
ここを頑張っておくと後がかなり楽です。
2日目(ヒアリング内容整理、方向付け)
診断報告書は現状、課題、提言の流れでまとめます。いわゆる二次試験に相当する部分です。
現状分析として、ヒアリング内容やその他の情報を元にSWOT分析などで整理します。
2日目から3日目までは約1週間空きますが、その間に各自担当分のレポートを作成しなければなりません。
課題や施策について細かい部分まで決める時間がありませんので、個人でレポートが作成できるくらいまでのレベルを目指します。
個別レポートのフォーマット、文字サイズ・フォントなども決めておくと良いでしょう。
全体的にリーダーのファシリテーション能力が問われますが、リーダーの力量にもばらつきがありますので全員でフォローしていくのが良いと思います。
1週間後の3日目に向けて、個別でレポートを作成しますが、水曜日か木曜日くらいに指導教官の方に中間報告を行うのが無難です。
3日目は全体の一貫性調整や仕上げの段階なので、ここで大幅な修正が入るとかなりきつくなります。
3日目(個別発表、全体調整)
個別のパートを確認し、議論したり、診断報告書の各パートの順番、整合性、統一性を確認します。
自分以外のパートで突っ込みたいことがたくさん出てきますが、時間も限られているため、あまり掻き回さない方が良いと感じました。
矛盾なく、最初から最後までコンセプトがブレていなければ、細かい部分は気にしない方が良いと思います。
4日目(仕上げ、印刷・製本)
誤字脱字チェック、仕上げを行い、印刷・製本を行います。
昼過ぎで中身について議論していたらかなりヤバい状況です。
5日目(企業訪問、発表、打ち上げ)
発表練習を行い、社長に報告します。
練習時間はあまりないので、時間調整などは前日に自宅でやっておいたほうが良いでしょう。
実務補修の感想、まとめ
実務補修は全体的に楽しく、貴重な経験となりました。
人脈や診断の経験も得られましたし、他の会社を見れたことも新鮮な経験でした。
指導教官の方からのアドバイスも本当にためになるものが多かったです。
またメンバーの方や指導教官の方と一緒に取り組む事で自分のレベル感が何となくわかります。
筆者の場合、自分は社内では通用しているが社外で通用する能力を持っているのか不安でした。
しかし、それなりに通用しそうであることが確認でき、自信になりました。
自分が所属している会社が実は結構ちゃんとしているとか社員が結構優秀だという気づきも得ることができました。
最後になりますが、乗り切るコツは以下の通りです。
- 事前準備をしっかりやり、ヒアリングの質を上げる
- 全力投球でやる
ことです。
中小企業診断士に合格した後は転職やフリーランスの可能性が広がります。
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